当然ながら歳とともに
歩行速度は落ちてきて
後ろから来た歩行者に追い抜かれること
しばしばである。
この日も狭い鋪道を歩いてたら、
どっかの若いネエチャンに
ほらほら邪魔よ、チンタラ歩いてんじゃないわよ、
どいてどいて!
と言わんばかりに追い抜かれてしまった。
俺は、ああ、いつものことさ、
と自嘲しながら
颯爽と遠ざかる後ろ姿を見送る。
けど、そのネエチャン
十メートルほど先で突然立ち止まった。
そして何やら悲痛な顔して、しきりに靴を気にしてる。
俺、追い付いて目を向ける。
ネエチャン、犬のウンコを踏んでしまっていたのだ。
泣きそうな怒った顔して
靴の裏を覗いてはアスファルトにこすり付けている。
おお、可哀想に。
でも、おかげで、俺、踏まずに済んだ。
ありがとう、ネエチャン。
そう胸の中で呟きながら通り過ぎて行く。
歳を取るのも悪くないかもしれない、
そう思った秋の昼下がり。